一般社団法人埼玉県建設業協会

経済一口メモ 2014年9月号

雇用者所得の伸び悩みなどで県内成長率を0.9%に下方修正

 2014年度の県内経済成長率について、当研究所では昨年末に1.1%のプラス成長と予測したが、年度当初からの経済情勢を踏まえて、見直しを行った。「緩やかな景気回復が予想される」という従来シナリオに変更はないものの、個人消費と設備投資の年度の伸び率を下方修正した結果、全体の成長率を0.2㌽減の0.9%とした。
 需要項目別にみていくと、まず、個人消費については消費増税の影響で下押しされるものの、年度後半には反動減の影響が一巡するなど持ち直すと想定している。ただし、雇用者所得が想定外に伸び悩んでいると判断、個人消費の年度の伸び率を1.3%→1.2%へ下方修正した。なお、当研究所が2月に実施した「季賃上げ見通し調査」では平均賃上げ率が前年度比1.9%増(加重平均)と前年調査の1.69%に比べわずかな伸びにとどまり、また、5月に実施した「夏季ボーナス支給予定調査」では従業員一人当りの平均支給予定額(加重平均)は前年同期比2.2%の増加と前年調査の2.6%を下回っている。ベースアップや夏季賞与が大幅に改善するまでには至らないようだ。
 設備投資は、圏央道の県内全線開通を見込んだ物流施設などの建設投資が期待されるが、当初見込んでいなかった駆け込み需要の反動減の影響、消費増税後の景気の不透明感などにより投資への慎重な姿勢が見られることから、年度の伸び率を4.5%→3.8%へと下方修正した。なお、財務省の法人景気予測調査(埼玉県分4〜6月期)によると、2014年度の設備投資計画は前年同期比8.1%減となっている。
 住宅投資は、住宅ローン金利が低水準で推移していることや住宅取得等に係る支援策などから下支えされるものの、消費増税の反動減から全体では3.5%減と予測した。また、公共投資は1.1%減と予測した。2013年度補正予算による追加経済対策が見込まれるものの、緊急経済対策を受けた2012年度補正予算により大幅に増加した前年度の規模に比べ下回ると想定している。なお、埼玉県の2014年度当初予算では投資的経費が前年度当初予算比▲1.5%の1,581億円であるが、市町村予算では投資的経費が前年度比18.0%増の2,597億円となっている。
 国内経済の成長率も合わせて見直しを行い、当初予測の1.0%から0.9%へと、わずかに下方修正した。修正の主な要因として、名目所得が伸び悩むなかで、物価が消費増税や円安によって上昇しているため、実質所得の減少が見込まれることから、個人消費を下方修正した。また、円安などに伴う物価上昇や電気料金の高止まりによる実質雇用者所得の低迷、海外経済の停滞に伴う輸出の伸び悩み、中東・ウクライナ情勢が世界経済に及ぼす悪影響など、景気下振れのリスクがあり、今後の動向に注意を払いたい。

(ぶぎん地域経済研究所)

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