一般社団法人埼玉県建設業協会

トピックス 2014年8月号

担い手確保・育成に議論集中
平成26年度三県連絡協議会

 千葉・神奈川・埼玉の三県建設業協会による「三県連絡協議会」が、7月17日午後3時から東京プリンスホテルで開催された。
 今年度の各県の提出議題は、「地域建設業の活性化について」(埼玉県協会)、「災害救助法に基づく建設業協会の「指定地方公共機関」認定について」(千葉県協会)、「公共投資の拡充および改正品確法の趣旨を具現化する諸施策の実施について」(神奈川県協会)の3項目。
  協議の結果、神奈川、埼玉県の議題は内容が共通するため整理し一つにまとめる。また、千葉県提案議題については指定拡大に向け要望していくことを申し合わせたが、深刻な人手不足を背景に、要望項目検討やフリートーキングの中でも、若年労働者確保のための安定的な公共投資の拡充と改正品確法の趣旨に基づく入札・積算の改善を求める意見を中心に議論が交わされた。
 当日は、当協会から真下会長をはじめ、島田、星野、野中副会長が出席した。
 開会に先立ち、開催県である千葉県協会の鈴木会長があいさつに立ち、「我々の業界においては現在、改正品確法、入札契約制度、担い手の確保、社会保険未加入問題などに注目が集まっている。各案件について国土交通省の検討状況を全建さんよりお示しいただき、関ブロ会議へ上程する要望事項をまとめていきたい」と述べ、有意義な意見交換の場となることに期待した。
 全建の押田専務理事も「自民党政権に変わり、地域建設業に対する政策的な位置付けが確立された。反面、業界に求められるものも大きくなってくると思われ、我々なりにしっかりとまとめていく必要がある」と挨拶、業界の活性化に向け活発な意見交換が行われることに期待した。

協議事項

◇地域建設業の活性化について
 標記について当協会の星野副会長が提案説明を行い、(1)地域建設業を対象とする維持管理工事の継続的かつ安定的な確保と指名競争入札の導入(2)適正な利益の確保と実勢価格を適切に反映した予定価格の設定(3)発注の平準化、週休2日制に配慮した工期の設定と一般管理費の増額(4)市町村への指導の徹底(特に、歩切りの撤廃、ダンピング対策の強化、契約の適正な履行の確保など改正入契法の履行について)を要望することについて千葉、神奈川両県の見解を求めたのに対し、千葉県は「埼玉県協会が提案した4項目は、今後の地方建設業の存亡に係わる重要な課題を含んでおり、特に「地域建設業を対象とする維持管理工事の継続的かつ安定的な確保と指名競争入札の導入」については、地方中小業者の活動を左右するポイントになる事項であり、一般競争入札のこれ以上の拡大に歯止めをかける意味からも「指名競争入札の導入」についての提案を評価したい。また、先に成立した改正品確法と入札契約の適正化法に関連する運用指針の作成と周知により、発注責任者として「適正な利益の確保と実勢価格を適切に反映した予定価格の設定」、「発注の平準化と余裕のある工期設定」、「低入札調査基準価格の一般管理費の増額」、「市町村への指導の徹底による歩切りの撤廃とダンピング対策の強化」などの課題の解消に向けた取り組みが前進し、企業存続に向けて最低限の利益確保が可能となる公共事業市場が構築されるよう念願している」との見解を示した。
 神奈川県は、建設業の担い手不足については、以前から課題とされていたが、さらにここ数年深刻さを増してきており、加えて、就業者の高齢化の進行と、若年者の割合が極端に少なくなっていることは大変深刻な状況である。このままの状況が続けば近い将来建設産業自体が成り立たなくなる、というべき事態で、まさに埼玉県の提案にもあるように、将来の建設産業を担う質の高い人材の確保・育成は、業界を挙げて取り組むべき喫緊の最重要課題と考える。当協会としても、建設人材の確保育成を重点課題として、神奈川労働局やハローワークとの連携による若年入職者確保育成対策や、工業高校生を一堂に集めた建設ガイダンスセミナー・現場見学会開催、インターンシップの受入れ拡大など人材確保対策の拡充強化を図っているところである。しかしながら、社会環境や国・自治体の政策の変化などに大きく影響されて現状に至ったことを踏まえると、我々業界の取組みだけでは焼け石に水で、この状況の根本的解決には継続的な建設投資の確保と、常に適正な賃金が支払える水準になるような入札契約制度の大幅な改善がまず必要である。この6月から施行された改正品確法では、品質の確保とともに担い手確保、ダンピングの防止が基本理念に追加されたところであるが、この趣旨を実現するために、埼玉県さんご提案のような事項の改善を国に求めていくことは極めて重要」との考えを示した。
 全建からは、説得力を強化する意味から文言の一部を修正するほか、「改正品確法により地域建設業を守る姿勢をはっきりと打ち出したことから、4項目については重要な課題であるが、一方的に求めるだけでなく、足下をすくわれないようしっかりとした理論武装をする必要がある」とのアドバイスがあった。
 また、当協会の真下会長は人材の確保・育成問題に触れ、「25歳位の作業員の賃金比較を行うなど、具体的なデータが必要」との指摘があった。

◇災害救助法に基づく建設業協会の「指定地方公共機関」認定について
 千葉県協会が標記の説明を行い、埼玉、神奈川両県の見解を求めたのに対し、当協会の島田副会長が、「本協会においても自然災害のほか家畜伝染病対応など個々の協定に基づき、緊急時の応急対策業務に協力しているが、その活動位置付けが明確でないことから、建設業の社会的貢献度が認知されにくい状況にある。そこで「指定地方公共機関」の指定に向けて検討を開始しているが、現在の建設業は、技術者・技能者の高齢化とともに若手の入職が進まず、公共事業予算の縮減に伴い疲弊している状況にあることから、指定については、活動業務の公共性、公益性に鑑み、これまで以上に重要な役割と責任を負うことになるため、会員の意見などを聞き、引き続き検討を重ねていく」考えを示した。
 神奈川県協会は、「当協会では、現在のところは指定機関化への取組みは特に行っていないが、(1)県と締結している各種協定と、(2)協会で策定した「災害対策行動計画」により、実質的には指定地方公共機関と同様の体制ができていると考えている。まず、協定については、県知事と地震等の災害時の応急活動に関する基本協定を締結しており、これをもとに各土木事務所と支部などで具体的な災害協定を締結しているほか、県施設や県営住宅の点検協力、応急仮設住宅建設、被災建物の解体撤去など、知事や、県の担当部署と具体的な協定を締結しており、これに基づき対応する会員名や人数などの体制を定めており、これらの協定は県の地域防災計画のマニュアルの中に位置づけられている。また、協会としても本年4月には「神奈川県建設業協会としての災害対策行動計画」をとりまとめ、平時の準備事項や情報連絡体制の整備、訓練の実施などを規定するとともに、有事の際は、協会会長をトップとした災害対策本部を設置して、行政からの依頼などに即応できる体制を整備したところ。以上、いざという時に行政のそれぞれの所管部局と連携して動けるように体制を整えたと考えているが、指定地方公共機関については、知事が指定するもので、県として安全防災全体の組織体制の考え方の中で、指定要請があった場合には受けることになると考えている。なお、災害時の道路啓開や復旧活動への貢献など、建設業界が地域で果たしている役割については、協会としても積極的にPRしているところであるが、国・地方公共団体においてもあらためて積極的な広報を行うよう強く要請していくべきと考える」と主張した。
 全建からは、「地域の実情がそれぞれ違っているためしっかりPRすることが重要。指定されると義務が生じるが、メリットもある。全建としては広域的な災害について検討していきたい」との見解が示された。

◇公共投資の拡充および改正品確法の趣旨を具現化する諸施策の実施について
 神奈川県協会が標記の提案説明を行い、埼玉、千葉両県の見解を求めたのに対し、当協会の野中副会長が「建設産業の長期低迷がもたらした疲弊の影響により、担い手企業と担う人の減少が著しく、特に、中山間地域では一部の加重な負担で何とか凌いでいるのが現状で、このような地域が徐々に拡大している。インフラ維持管理費用など、地域への予算配分も十分でなく、一般競争を原則とする現在の入札契約制度下では、地域建設業は受注量と適正な利益、経費の確保もままならず、将来の担い手の確保・育成はもとより、健全で安定的な経営の維持、継続は極めて困難な状況にある。また、当県内においても、未だに歩切りや予定価格の事前公表が続けられているほか、ダンピング対策を講じない、総合評価方式も実施しないなど、入契法や品確法の適正な履行に後ろ向きな自治体が散見される。こうした環境下、神奈川県協会がご指摘のように、国土強靭化基本法の成立により、公共投資の計画的、安定的な確保が期待されるとともに、インフラの品質確保とその中長期的な担い手確保、適正な利益の確保、ダンピング対策の強化、入札契約の適正化などをねらいとして品確法、建設業法、入契法の一体的な改正が行われたことから、受注環境の改善が期待されるところで、今後の動向に大きな関心を寄せている。神奈川県協会が提案される社会の維持発展に極めて重要な役割を担う地域建設差産業の再生・発展のために、公共投資の拡充と共に改正品確法の趣旨を具現化するよう、(1)公共投資の拡充および入札契約制度のさらなる改善(2)人材の確保・育成への取り組み(3)地方公共他団体への指導の徹底など、喫緊の重要課題に関する要望と言える」として、全面的に賛同した。
 千葉県協会は「提案の3項目は地域建設企業の今後の活路を見いだす上で、必要不可欠な活性化策である」とし、全面的に賛同するとともに、「今回の改正品確法において、国は今年度、発注者の共通ルールとなる運用指針を策定することになっているが、予定価格の適正な設定、歩切りの排除、調査基準価格などの見直し、設計変更の適正な実施など、適正な価格による契約について、国が各都道府県に要請している事項を地方公共団体が遵守するよう、国による指導を強化していくことが、疲弊した地方建設企業の経営環境の転換につながっていく早道」との考えを示した。
 全建からは「公共投資の拡充については継続して言い続けていくことが必要。今後、国土交通省は、品確法改正に伴う運用指針と担い手確保・育成の2点に絞り議論してくるものと思われる。要望の3項目は重要課題であり、しっかりとした意見にまとめていくことが重要。特に、担い手確保・育成については全建において年内に取りまとめる方針」とのアドバイスがあった。


社会保険未加入問題と
社会保険・労働保険の基礎知識学ぶ
建設業経営講習会

 当協会は7月28日午後1時30分から、埼玉建産連、東日本建設業保証埼玉支店との共催により、「建設業経営講習会」を建産連研修センター大ホールで開催、会員企業の経営者・経営幹部など約40名が受講した。
 同日は、「建設業における社会保険未加入問題と社会保険労働保険の基礎知識」をテーマに、社会保険労務士の吉川直子氏が約2時間にわたって講演した。
 吉川講師は「建設業の持続的な発展に必要な人材の確保と、企業間の健全な競争環境の構築を目指すために、平成29年には建設業界において法律上加入の義務があるにも関わらず、社会保険未加入の企業は工事現場から排除されることになった」とし、未加入問題の概要、具体的に実施される対策、社会保険・労働保険の基礎知識などについて説明した後、平成29年までに元請企業・下請企業が具体的にどのような対応が求められているかについて、わかりやすく解説した。


担い手三法が改正

 建設産業の中長期的な担い手の育成・確保を目指し、今通常国会で一体的に審議された改正公共工事品質確保促進法、改正建設業法、改正入札契約適正化法が、先の衆院本会議で可決、成立した。改正品確法は、中長期的な担い手の育成・確保に配慮することを発注者責務と定め、全ての公共工事の発注者にこの責務の下で予定価格を適正に設定したり、多様な入札契約方式の活用を求める。改正建設業法では建設業許可の業種区分を見直して「解体工事業」を新設、入契法では「ダンピング防止」を法律の柱に位置付け、行き過ぎた価格競争の是正を図る。
 議員立法の品確法は、価格のみで落札者を決めてきたそれまでの公共調達に、応札者の技術力も評価して落札者を決める総合評価方式を普及させ、個別工事の品質を確保する役割を担ってきた。
 改正品確法では、法律の基本理念や発注者の責務として「中長期的な担い手の育成・確保」に配慮することを明確化。公共工事の発注者に対し、個別工事の品質だけでなく、建設産業が正常に機能し、担い手を育成・確保できるよう配慮することで、入札契約などの発注関係事務を運用するよう求めた。
 具体的には、予定価格を不当に控除する「歩切り」が禁止され、受注者が「適正な利潤」を確保できるよう、市場価格を反映した労務・資材単価を使い、適正な予定価格を設定しなくてはならなくなる。最低制限価格・低入札価格調査基準価格の導入と改善、契約変更の円滑化、スライド条項の一層の活用などが進む効果も期待されている。
 工事の性格、地域の実情に応じ「多様な入札契約方式」の導入を求めたことも今回の改正の柱の一つ。技術提案で選定した参加者との交渉で予定価格を決める技術提案・交渉方式をはじめ、段階選抜方式、インフラの維持管理への複数年度契約・共同受注などの導入を促す。
 改正法は、都道府県や市町村などが改正法の趣旨に沿って発注関係事務を運用できるよう、国に発注者支援のための運用指針を策定することも求める。国土交通省は、地方自治体、学識経験者、建設業界などの意見を聞きながら、年内にも運用指針をまとめる。
 改正建設業法は、1971年以来、43年ぶりに建設業許可の業種区分を見直し、解体工事業を新設する。業種の新設は改正法公布後2年以内に施行し、施行後3年の経過措置を設ける。経過措置期間中は、現行の「とび・土工工事業」の許可業者が解体工事を施工することを認める。国交省はこの間に解体工事業の技術者制度の創設と普及を急ぐ。
 改正入札契約適正化法は、法律の柱に「ダンピング防止」を追加。国交省は同法に基づく入札契約適正化指針を改定し、具体的な措置を規定する。また、これまで下請け契約の総額が3000万円以上(建築は4500万円以上)の公共工事に限っていた施工体制台帳の作成・提出義務の範囲を全ての公共工事に拡大する。


建設業にも担い手確保の責務
改正品確法・建設業法の一部施行で通知

 国土交通省は、改正公共工事品質確保促進法・建設業法・入札契約適正化法が4日に公布され、一部を同日に施行したことから、地方自治体と建設業団体に改正の内容を周知する通知を送った。通知では、改正建設業法で、担い手の確保・育成を責務として位置付けた建設業者・建設業団体に対し▽講習・研修による人材育成▽適切な賃金支払い▽社会保険の加入▽元請け・下請け取引の適正化▽若年者・女性の入職促進―に取り組むよう促した。また、「解体工事業」の新設について、経過措置などにより、公布後約5年間は「とび・土工工事業」の許可で解体工事を施工できると明示した。
 通知は、国交省と総務省の連名で都道府県・政令市に送付され、都道府県には管内の市区町村への周知も求めた。建設業団体には、国交省から同様の通知を送った。
 改正建設業法では、建設工事の担い手の育成・確保と施工技術の確保を建設業者と建設業団体の責務と位置付けた。通知では、この規定に基づき▽技能労働者、技術者などに対する講習・研修の実施▽技能労働者らへの適切な賃金支払い▽社会保険加入の徹底▽下請け契約における請負代金の適切な設定と支払い▽広報などによる若年者や女性の入職促進―に努めるよう求めた。
 これらに取り組む建設業団体が国土交通大臣に届け出ることができる仕組みを検討しているとも記載した。
 建設業許可の業種区分に「解体工事業」を追加することについては、公布後2年以内に施行し、施行後3年は経過措置を設けるため、公布後5年間程度は引き続き解体工事業の許可を受けなくても「とび・土工工事業」の許可で解体工事を施工できると明示した。
 一方、改正入契法の柱に「ダンピング防止」が追加されたことから、自治体に低入札価格調査基準や最低制限価格の適切な設定を要請。ダンピング防止策の前提として、予定価格の適正な設定が求められるとして、設計金額の一部を控除する「歩切り」を行わないようあらためて要請した。
 改正品確法については、発注者責務に担い手の育成・確保が盛り込まれた趣旨を踏まえ、適正に発注関係事務を実施するよう求めた。運用上の留意事項については、同法の基本方針や運用指針で示し、あらためて周知するとした。


改正品確法 運用指針策定で意見交換
26日から監理課長等会議 国交省

 国土交通省は、都道府県の監理課長や契約担当課長を集める監理課長等会議を26日から全国8ブロックで開き、改正公共工事品質確保促進法を運用する際の留意事項などを示す「運用指針」について意見交換する。改正法では、改正の趣旨を実際の発注関係事務に反映するため、国が地方自治体、建設業界、有識者などの意見を踏まえて運用指針を定めるとしている。国交省は、監理課長等会議に参加する都道府県を皮切りに意見交換を開始し、7〜8月に建設業団体や市町村の意見を聞く場をあらためて設ける。運用指針は年内にもまとめる見通しだ。
 運用指針は、改正品確法で公共工事の発注者の責務として位置付けられた「中長期的な担い手の確保・育成への配慮」を、実際の発注関係事務(予定価格の設定、低入札価格調査基準などの設定、多様な入札契約方式の導入)に反映させるために策定する。
 自治体などの発注者が公共工事の性格、地域の実情に応じた入札契約方式を選択したり、改正法の趣旨を踏まえた適正な発注関係事務を実施できるよう、国交省などが自治体、学識経験者、民間事業者(建設業など)の意見を聞いて運用指針を策定することになっている。
 26日の九州・沖縄ブロックを皮切りに、全国の地方整備局で開催する監理課長等会議では、国交省が品確法・建設業法・入札契約適正化法の改正の趣旨を説明。品確法の運用指針策定に向け、参加する都道府県の担当者と意見交換する。また、管内の市町村に対しても改正品確法の趣旨を理解してもらえるようあらためて要請する。
 会議ではこのほか、国交省が大型建築工事などの入札不調の増加に伴って打ち出した施工確保対策の効果も聞く。8月から直轄工事で実施する社会保険未加入企業(元請け・一次下請け)の排除について、都道府県にも同様の取り組みを開始するよう再度促す。
 監理課長等会議の日程は次の通り。
 ▽九州・沖縄―6月26日▽近畿―7月9日▽中国―7月10日▽四国―7月14日▽北陸―7月16日▽中部―7月17日▽北海道・東北―7月23日▽関東―7月28日


発注者協議会で連携強化 国交省

 国土交通省は、地方整備局単位で地方自治体や国の発注機関などを集める「発注者協議会」を活用し、改正公共工事品質確保促進法(品確法)に位置付けられた「発注者責務」を果たすため、各発注者間の連携を強化する。各発注者で異なる成績評定要領の標準化などに加え、入札不調・不落や工期の平準化などの共通課題に対応できるようにする。また、改正品確法の運用指針策定に向けた意見交換の場としても協議会を活用。23日の関東ブロックを皮切りに、7月中に全ブロックで協議会を開き、各発注者の声を指針に反映させる。
 発注者協議会は、品確法制定を契機に2008年度に各地方ブロックごとに設立。各地整が中心になり、国交省運輸局、農林水産省農政局、財務省財務局などの国の機関、地方自治体、高速道路会社などの特殊法人といった、公共工事の主な発注者が参加している。
 これまでの協議会は、総合評価方式の導入拡大をメーンテーマに、各発注者が情報を共有する組織として活用されてきた。
 ただ、4日に施行された改正品確法では「中長期的な担い手の育成・確保への配慮」が発注者責務に位置付けられたことから、各発注者は、この責務を踏まえて発注関係事務の実施が求められる。さらに国・自治体が、こうした理念の実現に向けて相互に連携・協力する規定も新設された。
 このため、国交省では、成績評定要領など基準類の標準化に加え、各発注者に共通する▽入札不調・不落▽事業特性に応じた入札契約方式▽発注見通しの統合▽工期の平準化・通年化―などの課題に対応できるよう、協議会の場を活用して発注者間の連携強化を図る。
 こうした動きの一環として、北陸ブロックでは2014年度から「予定価格の事後公表への移行」や「予定価格の適正な設定」などの共通目標を掲げ、各発注者の取り組みの結果を公表することを決定。管内の3県は、協議会に参加するメンバーをこれまでの部長級から副知事に格上げした。
 一方、改正品確法の趣旨を各発注者に浸透させたり、改正法の趣旨に基づく発注関係事務を円滑に実施するための「運用指針」をまとめるための意見交換の場としても協議会を活用する。7月中に全ブロックで協議会を開催し、年内にもまとめる運用指針の策定に向けて各発注者の意見を聞く。


品確法運用指針の「項目イメージ」

 国土交通省は、改正公共工事品質確保促進法(改正品確法)で規定された「発注者責務」を果たすために、各発注者の共通ルールとなる運用指針の「項目イメージ」を整理した。発注関係事務の各段階で考慮すべき「担い手の確保・育成に必要な適正利潤を確保するための予定価格、適正な工期等の設定」「施工現場における週休2日など労働環境の改善」などの項目を挙げている。同省は項目イメージをたたき台として全国の発注者や建設業団体などの意見を聞き、年内にも運用指針をまとめる考えでいる。
 運用指針は、公共工事の発注者が改正品確法の理念や発注者責務に沿って発注関係事務を実施できるよう国が定める。自治体、学識経験者、事業者などの意見を反映させることになっており、国交省は、都道府県の監理課長らを集める監理課長等会議、自治体や国の発注機関による発注者協議会などに項目イメージを示し、意見交換を行っている。
 運用指針の項目イメージでは、発注関係事務の▽調査・設計▽発注準備▽入札契約▽施工▽完成後―の各段階で考慮すべき内容を示している。例えば調査・設計には、発注見通しの統合や債務負担行為の活用による発注・工事施工時期の平準化、事業目標の設定・事業全体の工程計画の作成などを盛り込んでいる。
 発注準備の段階では、受注者が「中長期的な担い手の育成・確保」に必要な適正利潤を得られるよう、最新の市場実態を踏まえた予定価格と適正な工期を設定するとした。施工の段階については、現場の週休2日、労務単価の周知徹底など「労務環境の改善」を項目に位置付けている。
 さらに、改正法の柱の一つである事業特性などに応じた「多様な入札契約方式」を発注者が適切に選択できるよう、具体的な入札契約方式も例示。改正法に盛り込まれている技術提案交渉方式や段階的選抜方式などに加え、災害時の緊急随意契約、コスト+フィー契約、総価請負契約などを列挙した。


改正品確法等説明会8日から

 国土交通省は、8日から改正公共工事品質確保促進法(改正品確法)などに関する地方自治体・建設業団体向けの説明会を全国9ブロックで開き、改正品確法に基づく「発注関係事務の運用指針」の骨子イメージ案を示す。イメージ案では、発注者が発注関係事務の各段階で考慮すべき項目を整理し、改正法の趣旨に沿った発注関係事務として▽週休2日の確保を踏まえた適切な工期設定▽一定期間を越える工事における債務負担行為の活用▽全工事での低入札価格調査基準などの設定▽社会保険等加入の徹底―などを例示した。
 運用指針は、改正品確法で規定された発注者責務に基づいて発注関係事務を実施するための、発注者の共通ルールとなるもの。改正法では、自治体や事業者などの意見を反映し、国に運用指針を策定するよう求めており、国交省はすでに6月に「項目イメージ」をまとめている。
 骨子イメージ案は、項目イメージをブラッシュアップさせたもので、各発注者が中長期的な担い手の育成・確保に留意して実施する発注関係事務を公共工事の各段階(調査・設計、工事発注準備、入札契約、工事施工、完成後)で整理している。
 工事発注の準備段階では、発注者が工事・地域の特性や自然条件に加え、技能労働者が週休2日を確保できるよう、不稼働日を踏まえた適切な工期を設定するべきと明記。一定期間を越える工事には債務負担行為を活用し、施工時期を平準化することも求めている。
 入札契約段階では、社会保険未加入企業の排除に取り組むことも明記した。若年入職の促進を図るため、過去の工事実績要件を緩和するなど、若手技術者の配置に考慮した競争参加資格を設定することも要請。ダンピング対策として、予定価格の事後公表、全ての工事に低入札調査基準と最低制限価格の設定も求めた。
 公共工事の各段階での対応に加え、発注関係事務を適切に実施するための環境整備として、工事成績データの共有化・相互活用にも取り組む。具体的には、積算要領、仕様書、施工管理基準などの標準化・共有化、工事・業務成績評定の標準化とデータベース整備を求めた。
 このほか、改正品確法の柱の一つである多様な入札契約方式を選択する際の留意点に「工事の技術難易度」「工事完成の緊急度」「工事価格・仕様の確定度」「維持管理の状況」の4点を提示。加えて、政策目的に応じた入札契約方式として▽地域インフラを支える企業を確保する方式▽若手技術者の配置を促す方式▽補修の技術的課題に対応した方式▽発注者を支援する方式―の4方式を例示している。
 国交省は、8日に近畿ブロックで開く説明会から、改正建設業法と社会保険未加入対策の強化と合わせて改正品確法の運用指針の骨子イメージ案を建設業団体と自治体に説明。各ブロックの説明会が終了する8月中旬以降、参加者らにあらためて運用指針について意見を募る。


「改正法精神を全国に」
北村建設業課長

 改正公共工事品質確保促進法(改正品確法)、改正建設業法、改正入札契約適正化法の「担い手3法」の成立は、建設業再生に向けた節目となった。3法に共通する精神は疲弊した建設業が抱える最大の課題の一つである「中長期的な担い手の確保・育成」だ。改正法成立直後の6月に就任した国土交通省土地・建設産業局の北村知久建設業課長は建設専門紙との就任インタビューに応じ「国、地方自治体、建設業界が意思疎通を図る」ことをキーポイントに、改正法を運用する方向性を示した。
 ――建設産業が置かれている現状をどう見ますか。
 「この2年間で建設産業を取り巻く社会情勢は大きく変化した。公共投資が底になり、建設業自体に仕事がない2年前の状況から、景気回復による建設投資の増加で、仕事があっても人手が足りないという大きな変化が生まれることになった」
 「ただ、そのことで、社会保険未加入問題など、建設業が以前から抱えている課題が大きく改善したわけではない。建設産業全体が上向きになっている今だからこそ、将来を見通すための施策を講じる必要がある」
 ――そのためにも、改正品確法をはじめとする「担い手3法」に実行力を持たせることが重要になる。
 「立法府の手で改正品確法は制定されたが、ここからは、われわれ行政が改正法の精神を公共調達の現場に根付かせる段階に入る。改正法の説明会や発注者協議会などの場を通じ、国、地方自治体、建設業界が意思疎通を図らなくてはならない。関係者の意見を十分に反映し、改正品確法の運用指針などを策定し、法の精神を全国に広げることが当面の仕事になる」
 ――就任後間もなく、建設産業活性化会議の中間報告がまとまった。中間報告に盛り込まれた施策をどう動かすのか。
 「当面は『工程表』をつくって官民の役割分担を明確にし、それぞれの立場で目標を示す作業を進めることになるだろう。施策が多岐にわたっているので、全てを同時に進めるということにはならないが、建設業界に業界が抱える課題の解決策を議論してもらうこと自体が、重要なプロセスになるのではないか」
 ――中間報告に盛り込まれた『重層下請構造の改善』に対する考えは。
 「個別工事にはさまざまな事情があるし、この専門工事業者に任せればいい成果物ができるということは当然ある。ただ、無駄な重層化は、これから働き手が不足するという社会情勢を考えても、合理的ではないという問題意識は持っている。他産業と競争するためにも、合理化は必要。一律に次数を制限することは難しいが、次数に目標を設けるような方向でこれから議論していきたい」

【略歴】北村知久(きたむら・ともひさ) 東京大学法学部卒。1987年旧建設省入省。住宅局住宅政策課住宅経済対策官、日本高速道路保有・債務返済機構総務部総務課長、土地・水資源局土地政策課土地市場企画室長、内閣法制局参事官などを歴任し、6月から現職。山梨県出身。50歳。

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