一般社団法人埼玉県建設業協会

トピックス 2013年11月号

関東甲信越ブロック会議
公共事業費の継続確保を
投資額示した将来像不可欠

 平成25年度関東甲信越地方ブロック会議と地域懇談会が10月3日、東京大手町の経団連会館で開催された。全建側は、長期的展望に立って人材の育成・確保を図るには、公共事業予算の安定的・継続的な確保が必要だと主張。14年度予算概算要求の実現に向け、全ブロック挙げて声を大にして要望していく考えを表明した。国交省側もこれまでの予算削減基調を反転させるために最大限努力する方針を示し、官民で方向が一致した。
 冒頭、挨拶の中で関東甲信越地方建設業協会の本間会長は、消費税引き上げと合わせた経済対策の実施に触れた上で、「重要なことは景気動向に左右されず、社会資本整備を着実、計画的に推進するための、当初予算における公共事業予算の継続的な増額・確保だ」と強調した。
 国土交通省の吉田・建設流通政策審議官も経済対策について「中長期を見通すためには当初予算を確保することが必要。14年度当初予算でベクトルが変わったと実感できる予算にしたい」とし、理解を示した。全建の淺沼会長は「建設業が国民の安全・安心・快適を守る役割を果たし続けることと、建設産業を健全化することは表裏一体と考えている。安定的に公共事業予算が確保されることで中長期的な経営を見通せるようになり、人材を確保し・技術・技能伝承に注力できる。このため、投資額が盛り込まれた中長期の国土保全ビジョンを示してほしい」と要請した。
 また、新任の深澤・関東地方整備局長からは、(1)本省で決めた政策を具体的に実行する(2)関東地方整備局独自でできるものは積極的に実行する(3)現場の実態をきちんと本省に伝えていく、と言った三つの覚悟が表明された。
 関ブロ会議に先立ち開かれた地域懇談会には真下会長、星野副会長と堀本専務理事が出席、国土交通省から示された「中長期的な建設産業の担い手確保とインフラの品質確保」と、全建提案の「公共工事の迅速かつ円滑な施工確保について」をテーマに、業界、行政が取り組む対策について各都道府県協会と意見が交わされた。
 引き続き開催された関ブロ会議には、真下会長、島田副会長、星野副会長、野中副会長らが出席、6項目にわたる要望を行い、意見交換の後すべて採択決議した。

要望事項は次のとおり

公共事業予算の安定的・持続的な確保について

 平成26年度予算の概算要求において、防災対策や暮らしの安全・地域活性化につながる「新しい日本のための優先課題推進枠」として、上乗せ要望できる別枠を最大限活用されたと聞いている。「国土強靭化」具現化の試金石となる平成26年度当初予算において、建設産業が長期的展望に立ち、企業の最大財産である人材の確保・育成と、品質確保や災害対応に欠かせない設備の適切な更新につながるよう、公共事業予算の安定的・持続的な確保を要望する。

 回答:「25年度より公共投資の減額に歯止めがかかり、26年度については減災、防災を中心にこれまでの1.17倍の概算要求を行っている。今後も安定的な予算確保に向けて努力していきたい」

地域建設業者の再生・発展に向けた総合的な対策について

 地域建設事業者の将来を見据えた総合的な対策として、(1)将来にわたり公共投資を拡充・強化すること。特に地域の老朽インフラの補修修繕の推進、地域建設事業者を対象とする地域維持工事の継続的な確保など(2)建設産業が今後もその役割が果たせるよう、就業者の確保、人材の育成など、総合的な対策(週休二日制の導入、職場環境の向上のために、実態に則した工期の設定や設計額への配慮など)に取り組むこと(3)地元業者の受注機会の向上に向け、国などの発注工事においては県内企業の受注率を50%以上に、地域密着型や地元企業活用型工事の拡大など、地元企業を評価・優先する入札契約制度を一層充実すること。また、入札契約制度をより一層改善(不良不適格業者の排除やダンピング対策の一層強化)すること(4)地方公共団体などの発注機関に対する「入札・契約適正化指針」の周知・指導の徹底を図ることを要望する。

 回答:「インフラ整備のための予算確保は勿論だが、今年度から労務費単価を15%引き上げるなど、処遇改善のための努力を行っている。さらに、週休2日確保のため適切な工期設定ができるよう改善を行っていく。また、県内企業の受注機会確保ができるよう、地域インフラの維持管理や災害対応における発注契約方法を検討中だ」

脆弱な国土日本における、国土強靭化の重要性の国民への理解向上について

 東日本大震災により、日本国民は、自分たちが住んでいる国土が極めて脆弱であるということに改めて気付かされた。そして、最近も日本の各所においてゲリラ豪雨や竜巻などが多発している。多くの自然災害と同居しながら生きていかなければならない我々は、一日も早い国土強靭化基本法の成立と国土強靭化対策の実施を望んでいる。しかし、「公共事業イコール建設業の利益」というイメージが業界内外ともに植え付けられており、公共事業不要論と悪玉論はいまだに消えていない。そのためにも、国土強靭化の重要性について国民への理解向上を早急に行っていただきたい。

 回答:「公共事業に対する厳しい見方があったことを踏まえ、建設業の重要性を国民に理解できるよう努めていきたい」

予定価格の上限拘束性の見直しおよび公契連モデルにおける設定範囲の上限撤廃について

 公共工事の予定価格が会計法および地方自治法による上限拘束性によって制限されているため、それ以下の金額で受注しなければならず、その結果、資材の価格を値切るか、できなければ会社の利益分を充て、さらに赤字となれば技能労働者へのしわ寄せをせざるを得なくなる。一方、公契連モデルによる一般管理費などの算入率は、本年5月に引き上げられたが、基準価格の設定範囲がこれまでと同様に0.7〜0.9に設定されており、「合計額が、予定価格に0.9を乗じて得た額を超える場合にあっては0.9を乗じて得た額とする」となっていることから、引き上げ効果が頭打ちとなっている。良質な品質の社会資本整備に努めるために適正な価格で受注することが不可欠であることをご理解いただき、(1)予定価格の上限拘束性の見直しを行い、予定価格を標準価格とすること(2)基準価格のさらなる引き上げと設定範囲の見直しを行うことについて要望する。

 回答:「適正価格の受注のため、予定価格をどのように設定するかが課題となっている(例えば、技術提案を踏まえた予定価格の導入など)が、議論を重ねて年内をメドに結論を出すこととしている。また、本年5月に行った一般管理費や労務費単価の見直しなどにより、低入札調査基準価格の水準は2%程度アップしたと認識している」

市場単価の見直しについて

 現在、「市場単価」の決定方法は、落札後の元請け業者から専門下請け業者に外注される取引価格を市場調査し、材料費、労務費、機械経費の施工単位あたりの単価としていると聞いている。この方法では、同じ構造物の市場単価が毎年競争入札をすることにより、落札率が加味されることから、必然的に「市場単価」は低下し、スパイラル化してしまう。このため、「市場単価」の決定方法について、落札率で割り戻した「市場単価」とすることなどや、「市場単価」の加算率・補正係数についても、山間僻地、急峻な地形、脆弱な地質などの割り増しを考慮した「市場単価」とするなど、実施施工価格と市場価格との乖離がないような「市場単価」の設定をお願いしたい。

 回答:「単価の決め方については、双方にそれほどの差はないと思っており、市場単価だけを設定することはできない。より適正な予定価格をどのように設定するかに尽きると思う」

物価の変動などによる請負代金の変更(スライド条項)について

 現行の制度は、国などの発注規模の大きい工事を対象にしていると想定されるが、地域の中小規模の工事においては、工期末の2ヶ月前までに最終的な全体工事費・契約数量などをまとめ申請することは事務処理的に難しい状況である。このため、(1)請求時期の見直し(「工期末の2ヶ月前まで」の規定の短縮)(2)対象工事費の1%の基準の緩和(現行では高騰分が工事費の1%を超えないとスライド額算定の対象品目とならない)(3)受注者の負担すべき割合の低減など、地域の中小規模の受注者に配慮した制度を要望する。

 回答:「変更契約手続きのため必要な日程であり、概算数量でもよいから請求してほしい。発注者、受注者双方が同様のリスクを負担しているとご理解いただきたい」


平成25年度優良従業員表彰式
97社・212人を顕彰

 平成25年度建設業優良従業員表彰式が10月16日午後2時から、建産連研修センター大ホールで開かれ、30年以上勤続者と10年以上勤続者を合わせた212人に対し表彰状と記念品が贈られた。
 今年度は、30年以上表彰者39社・86人、10年以上表彰者58社・126人で、受賞者を代表して元建設の平林政信氏(30年以上)と、初雁興業の福島彩子氏(10年以上)に真下会長からそれぞれに表彰状が手渡された。
 式辞としてあいさつに立った真下会長は、「受賞された212名の皆様方に協会を代表して心からお祝いを申し上げます。長年にわたり建設業に従事し、社業の発展に大きく寄与され、公共事業をはじめ住宅・社会資本の担い手として尽力。その職務に対する真摯な取り組みと、日々自己研鑽してきた不断の努力が、本日の輝かしい栄誉に結実したものである」と敬意を表す一方、「緊急経済対策や復興特別会計などにより公共事業費の増額が期待されているが、各企業とも極めて厳しい経営環境に置かれ、従業員の雇用・福祉面にも影響が出ているが、経営改善への取り組みはもちろんのこと、安全・安心で豊かな地域社会の創造のため、業界全体が一丸となって県民の付託に応えていかなければならない。今後とも、業界の発展と社業の繁栄のためさらなるご尽力をお願いしたい」と激励した。
 続いて、来賓として出席した県土整備部の浅見健一副部長が、「先月、越谷市内で発生した竜巻をはじめ、地震、台風など予測のつかない自然災害の対応には、知識、経験、技術力に裏打ちされた地域建設業の力がとても重要。本日受賞の皆様には今後益々研鑽され、社業と業界の発展に尽力されることを期待する」と祝辞を述べた。
 最後に、受賞者を代表して元建設の平林政信氏が、「本日の表彰はご臨席の方々をはじめ、諸先輩の暖かなご指導の賜物」と感謝の意を表すとともに、「これからも微力ながら企業の中核として経営再生の一助となるべく、努力してまいりますので今後ともなお一層のご指導を」と謝辞を述べた。


記念講演を開催
「仕事は楽しく、自分に限界をつくらない」

 表彰式終了後には、JR東日本グループ(株)日本レストランエンタプライズの三浦由紀江・駅弁マイスターを講師に招き、「仕事は楽しく、自分に限界をつくらない」と題する記念講演が行われた。三浦講師は、専業主婦として3人の子育ての後、44歳で現在の仕事に就く。上野駅の売店にパートとして配属されるや1年間で年間売り上げを5千万円増やし、周囲からは「カリスマ駅弁販売員」と呼ばれている。専業主婦を楽しんだ後、別の人生を楽しく、安全で楽な仕事をするためにはどうしたら良いかと考え、(1)私の接客方法は、最高の演技で提案しよう。お店は私たちの舞台(2)商品の仕入れ、商品開発は現場目線、お客様目線に徹するとともに、(3)パート→正社員→所長→セールスアドバイザーに至る中で、一生懸命、一所懸命に続けることがキャリアになることを悟る(4)人が育つ環境を作るのが管理職であり、現場に権限を与えることで、元気で考えて行動でき、それが売り上げアップにつながるーと説いた。
 最後に、「学歴が無くても、仕事の経験が無くても、年齢が高くても、そんなことは関係ない。大切なのは自分で限界を作らないこと。頑張ってきたことは必ず成果につながる。自分の仕事を楽しみながら、コミュニケーションを大切に、勇気をもって必ず一歩を踏み出してください」とエールを送った。


建設産業人材確保・育成推進協議会
「私たちの主張」応募作品に
川上さん(平岩建設)が入選

 国土交通省と建設産業人材確保・育成推進協議会では、建設業を担う人達の意識高揚を図るとともに、広く国民に建設産業の役割や重要性についての理解と関心高めてもらうため、建設業に携わる人の「夢」や「憧れ」、これから就職しようとする若者へのメッセージを「私たちの主張〜未来を創造する建設業」として募集し、優秀作品への表彰を行なっており、今年で6回目を迎えました。
 今回、埼玉県から、平岩建設の川上健次郎さんの作品が佳作に入選し、10月17日に東京都港区のメルパークホールで開催された「優秀施工者国土交通大臣顕彰式典」の式場において表彰されましたので、協会だよりの紙上において、川上さんの入賞作品「感動を胸に」を紹介させていただきます。

感動を胸に

川上 健次郎

 「あなたの尊敬する人は?」
 真っ先に思い浮かべるのは決まって父親の顔である。昔からとても厳しかった父。父も建設業に携わっており、毎日朝早くに家を出て、帰ってくるのは夜遅く。休みの日も仕事へ行くことがよくあった。「建設業というのは大変な仕事だ。」父はよく仕事の話をしてくれた。その背中を見て感じたものは、建築業への興味と、そして父親への強い尊敬と憧れだった。
 高校二年生のとき、初めての海外でオーストラリアを訪れた。街の景観は日本とはまた違い、見る建物の数々にとても興奮したのを今でもはっきりと覚えている。「私も同じような感動経験を誰かにしてもらいたい。後世に残るような物をつくりたい。」建築への「興味」が私の「夢」に変わった瞬間だった。
 大学では建築を専攻し、今は建築の施工管理の仕事をしている。入社当初は期待と不安でいっぱいだった。「大丈夫、できる。」と何度も自分に言い聞かせていたが、現実は想像以上のものだった。初めての現場では分からないことだらけ。作業員と話をするにも分からない言葉が飛び交う毎日。何度も失敗し、怒られ、逃げ出したくなることもあった。学生の頃は、分からなければ誰かに聞けばいい。誰かに助けてもらえばいい。いつもどこかでそんなことを考えていた。しかし、社会に出れば毎回そのようにはいかない。自分で考え、自分で指示を出す。間違えれば自分の責任。甘えなんてきかない。責任感という大きな重りにつぶされそうにもなった。そうした思いを抱きながら月日は過ぎていった。
 その日はいくつもの業種の作業があり、工期も残りわずかということもあって現場の空気はとても緊張をしていた。作業員同士の作業場所も重なってしまい、一つの作業を進めるともう一つの作業が進まない。そんな事が何重にもなっていた。朝の打ち合わせは入念にやった。作業員はみな急いでいることは知っていた。しかし、最善を尽くすには多少作業を止めてもらわざるを得ない状況もあった。何度も説明をし、それぞれの作業員にお願いをした。慌ただしくではあったがその日を無事に終えることができ、ほっとしながら夕方事務所へ戻った。その時突然だった。事務所にいた上司が私を見て、「よくやった。」と声をかけてくれた。その一言。たったそれだけだった。でも、その一言が物凄く嬉しかった。私がこなしたことはたいしたことではなかったかもしれない。長い工事の中でのほんの些細なこと。しかし、そんな些細なことでも上司は結果を評価してくれた。人に認められること、自分の努力が結果として出たこと。私は人から褒められる事がこんなにも嬉しいものだとは思ってもいなかった。
 「達成感」という言葉がこの仕事には付き物だ。0から何かを創り上げ、完成したときのほんの一瞬かもしれないが、その時感じる感動は、私が学生の頃にいくつもの素晴らしい建築物に出会った時の興奮に近いものだと思っている。
 私は物づくりを通し、地図に自分が歩んでいく人生の足跡を残すようにこの仕事を続けていきたい。そして、自分自身が施工に携わった建物から誰かに感動を伝えていきたい。それが私の夢だ。


建退共理事長表彰
伝達式行われる

 建設業退職金共済制度普及協力者に対する勤退共理事長表彰の伝達式が、10月29日午前11時から協会会長室で行われた。
 表彰者は、佐伯工務店(さいたま支部)と田中工業(比企支部)の2社で、真下会長から表彰状と記念品が手渡された。
 当日は、佐伯工務店からは安藤嘉明社長が、また、田中工業からは田中一良社長が来所、受賞後、真下会長としばし歓談が続いた。


土木工事積算実務講習会開く
建設物価調査会と共催

 建設物価調査会との共催による「平成25年度土木工事積算実務講習会」が10月30日、建産連研修センター大ホールで開催され、会員企業から約90人が参加した。
 今回は、国土交通省ほか地方公共団体の工事を受注する際に、積算根拠となる「国土交通省土木工事積算基準」に基づいた工種の事例を通し、従来の積み上げ型積算に加えて、最新の積算手法である「施工パッケージ型積算方式」にも対応した演習問題を使用し、一件工事において工事価格(予定価格)の算出までを習得することを目的としている。
 プログラム内容は(1)平成25年度積算基準・歩掛の改正事項の説明(2)施工パッケージ型積算方式の概略説明(3)工事費積算の仕組みと手法の解説(4)演習問題「道路改良工事設計書」作成の工事概要と関係歩掛(5)間接工事費・一般管理費などの解説(6)演習問題の積算ポイントの説明(7)演習問題「道路改良工事設計書」作成(施工パッケージ型積算方式に対応)−について講演の後、質疑応答が行われた。
 同講習は、全国土木施工管理技士会連合会が実施している継続学習制度(CPDS)の認定プログラムとなっており、今回の受講者には6ユニットの学習単位が付与される。

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