一般社団法人埼玉県建設業協会

経済一口メモ 2013年11月号

県内企業の8割がアベノミクスを評価

 経済政策の「アベノミクス」で、日本経済はようやく回復の軌道に乗り出したが、その恩恵を受けているのは大手企業ばかりと言う声が多い。国内の9割以上もある中小企業にも、本当にアベノミクス効果はもたらされているのだろうか。建設業界にとっては、アベノミクスが業績向上に大きく寄与しているのであれば、受注拡大につながるものだけに気になるところだ。
 そこで当研究所では、アベノミクスが経営にどのような影響を与えているかを把握すべく、県内企業575社にアンケート調査を実施した。278社からの回答(回答率48.3%)を集計した結果、製造業で40%、非製造業でも44%の企業が現在のところ「プラスの影響もマイナスの影響も受けていない」と回答。「プラスの影響を多く受けている」企業は製造業で18%、非製造業では21%に止まり、「マイナスの影響を多く受けている」には製造業で26%、非製造業で15%だった。
 アベノミクスによる経営への悪影響は、非製造業よりも製造業の方がより受けているようで、おそらく金融緩和の実施から、為替相場で円安が進み、原材料仕入れ価格の上昇によるマイナス影響を強く感じているものと思われる。逆に非製造業では、アベノミクスの第1の矢である大胆な金融緩和と、第2の矢である機動的な財政政策がプラス効果をもたらしているようだ。つまり、金融緩和による消費マインドの持ち直しと、財政政策を背景とした補正予算効果からの公共事業の増加など、経営にとってプラスの影響を受けているものとみられる。
 プラス・マイナスの両面で、具体的な影響を複数回答で聞いたところ、まず製造業でのプラスの影響では、一般機械や輸送用機械などの業種で、円安の恩恵を受けて販売や受注数量が増加するなど、主に為替差益によるものだった。非製造業では、建設業や飲食・サービス業での受注高、売上高の増加を指摘する企業が多く、「公共事業の増加による業績への寄与」が目立っているのが特徴。
 マイナス面では、製造業・非製造業問わず、「原材料・仕入れ価格の上昇による負担増」が最大の影響で、それぞれ90%前後の回答がこの選択肢に集中した。円安の進行が原材料価格や輸入製・商品の上昇をもたらし、幅広い業種で悪影響を受けているようで、コストの負担増が強いられていることがうかがえる。
 アベノミクスによる経営への影響は、各企業の事情によっては、プラスとマイナスの両面に左右しているが、全産業でみると温度差はあるものの、約8割の企業が評価。評価しないとの回答割合は23%に留まっていることを勘案すると、デフレ脱却を目指したアベノミクスの政策自体は、多数の県内企業から受け入れられている。しかし、その効果となると、評価とは違って現在のところ、まだ企業経営にはプラスの影響が出ていないと言うのが実態のようだ。(ぶぎん地域経済研究所)

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