一般社団法人埼玉県建設業協会

経済一口メモ 2013年8月号

円高是正などで県内成長率を2.5%に上方修正

 2013年度の県内経済成長率について、当研究所では昨年末に1.3%のプラス成長と予測したが、毎年この時期に見直しを行っている。今年も、年度当初からの経済情勢を考慮しながら、見直し作業を行った結果、プラスの2.5%に上方修正した。上方修正の要因は、円高の是正や株価の上昇を背景とした消費マインドの改善から、個人消費が持ち直すことによる。また、設備投資や住宅投資などの民間需要、あるいはアベノミクスの第2の矢による緊急経済対策から、県内の公共事業も今後堅調に推移することが予想されることで、県内経済成長率の上方修正に至った。
 成長率見通しの修正では、主な需要項目別でも行っている。まず、今回の大幅修正の要因である個人消費は、有効求人倍率の緩やかな上昇と、今夏のボーナス支給の増加などで雇用・所得環境は持ち直してきた。年度末には耐久消費財を中心に、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が本格化すると思われることから、当初予測の1.3%から1.9%へと上方修正している。
 個人消費の持ち直しに伴い、生産活動も今後本格化すると予想。県内経済の成長率を押し上げるものと判断しているが、その設備投資も当初予測の2.5%から3.5%へと大幅に修正した。特に、円高是正による輸出の改善に伴い、生産活動が上向くことから、これによる設備投資への寄与を想定したためで、加えて圏央道のインターチェンジ周辺を中心に、製造業や物流施設などの建設投資が期待されることも、上方修正の判断材料としている。なお、財務省の4−6月期「法人企業景気予測調査(埼玉県分)」によると、2013年度の設備投資計画額は「全規模・全産業」で、前年度比24.1%増だった。
 住宅投資は、金利や地価の先高観、株価上昇もあって住宅取得マインドが改善すると予想。年度半ばには消費増税前の駆け込み需要が期待されることで、着工戸数の増加が想定される。しかし、当初予測時には既に、これらの要因は織り込み済みだったことから、5.0%の伸び率に変化はないと判断し、据え置いた。
 公共投資は、昨年暮れの当初予測から、環境が大きく変化している。緊急経済対策の効果が年度後半に本格化することが見込まれることで、当初予測のマイナス2.0%に大幅修正を加え、プラスの2.0%に上方修正した。その要因の一例として、2013年度の埼玉県予算では、投資的経費が前年度当初予算比で6.1%増、金額にして約92億円増の1,605億2,100万円となったことが挙げられる。これに、国の県内公共投資額が2012年度2月補正予算を合わせた13カ月予算で、前年度比で23.2%増に膨れ上がっていることも、マイナス成長からプラス成長へと転換させる大きな要因となっている。
 最後に、国内経済の成長率も、当初予測の1.2%から2.8%へと、大幅な上方修正とした。修正の要因として、円高是正や株価上昇の効果、海外経済の緩やかな回復に伴う輸出の持ち直し、緊急経済対策の効果などで民間需要が押し上げられると判断している。ただ、景気下振れのリスクとして、欧州の政府債務問題の再燃や、米国の量的緩和策縮小の影響、あるいは中国経済の減速懸念、特に理財商品(財テク商品)をめぐるバブル経済の破たんが心配されるところで、今後の動向に注意を払いたい。(ぶぎん地域経済研究所)

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