一般社団法人埼玉県建設業協会

経済一口メモ 2013年3月号

見えてきた公共事業の復活

 政権が変わったことで、建設業界にとっては、あまり歓迎されていなかった「コンクリートから人へ」という政策が見直され、「人からコンクリートへ」と転換が進み出している。政府は新年早々に、緊急経済対策から2012年度の補正予算を13兆円規模とし、さらには新年度予算も過去最大規模の92兆円を超した。いずれも特筆すべきは公共事業関係費で、補正予算では約4兆7,000億円と2012年度当初予算の約4兆6,000億円を上回る。新年度予算でも約5兆3,000億円の公共事業関係費が組まれ、合わせると約10兆円に達している。まさに、公共事業復活の狼煙が上がったようで、景気刺激策としての即効性への期待が再認識された結果だ。
 一方、埼玉県も2013年度当初予算を組んだが、一般会計の総額はほぼ前年度並みの1兆6,757億円を確保している。注目されるのが公共事業費で、7年ぶりに減額予算が下げ止まり、2月補正予算と合わせると2012年度当初予算から2割増しの1,034億円となった。県も国の“15カ月予算”と同じように、切れ目のない予算執行を行うために“13カ月予算”として編成したわけだが、公共事業の計画的発注で景気の底割れを防ぐのが狙いだ。
 政府と民間を合計した全国の建設投資額は、1990年代後半から減り続けている。その影響もあって、建設業界では長い期間にわたって苦境の時代が続いて来たわけだが、建設投資額の縮小は建設業者の淘汰を促してきた。この間、整理統合などが進み、全国の許可業者数は2011年度末現在で約49万9,000社までに減少している。ピーク時の60万1,000社(1999年度末)から約17%もの減少で、建設投資額の縮小規模に合わせた格好で建設業界の再編が進んできた。
 政府は、景気対策として公共工事がカンフル剤の効果を果たすと期待して、これだけの予算を計上したことは業界にとって歓迎すべきことだが、業者数が減っている今、切れ目のない工事発注が執行された場合、十分に対応できるのか少し心配な面もある。ただでさえ人手不足が深刻している上に、東日本大震災からの震災復興で、人も資材も東北方面に集中していることでもあり、現在すでにその手当てに腐心する事業者も多いはずだ。
 いずれにしろ、長い期間にわたって厳しい環境に置かれていた建設業界にとっては、政府をはじめとする各自治体の公共工事予算の増額はありがたいことだ。望むなら、単年度に終わらずに公共工事費の増額が継続することを願いたい。 併せて、閉塞感のある現在の景気から解放されて、民間の建設投資が活発化すれば、これまでの苦労がようやく報われるというものである。(ぶぎん地域経済研究所)

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